日本企業にとっての企業価値とアニマルウェルフェア政策、ケージフリー鶏卵調達の方針
AWCP企業政策リサーチ:インターン 吉野すみれ, シニアコーポレートコンサルタント 福田証子, 代表理事 上原まほ
企業価値とは
「企業価値」とはよく耳にする言葉ですが、どんなことを意味するのでしょうか。
企業価値とは、企業が社会や市場においてもたらす価値を包括的に捉える複合的な概念です。これは単なる財務的な数値や経済的成果を超えた、多面的な価値を意味します。企業の資金調達、倒産のリスク、M&Aの交渉で活用される指標です。企業価値が高ければ、事業がうまくいっている、健康であるということで、将来的なキャッシュフローが望め株価もプラスになります。
企業価値には大きく財務的側面と非財務的側面があります。財務的側面はとてもわかりやすく、売上高、利益、市場シェア、資産価値などの定量的指標で、企業の経済的パフォーマンスを示します。一方、非財務的側面は、ブランド力、イノベーション力、人的資本、企業文化、顧客との関係性、社会的責任、環境への配慮などが含まれます。こちらは定量化指標で理解できない場合があり、捉えにくいものかもしれません。確かに直接的に数値化することは難しいものの、企業の長期的な成功と持続可能性に極めて重要な役割を果たします。
例えば、イノベーション力は新製品開発を通じて顧客価値を創造し、優れた人的資本は企業の生産性と創造性を高めます。強固な企業文化は従業員のモチベーションを高め、社会的責任や環境への配慮は社会からの信頼を獲得します。
特に重要なのは、財務的価値と非財務的価値が相互に影響し合い、ダイナミックに変化する複合的なシステムを形成していることです。顧客との信頼関係、サプライチェーンにおけるパートナーシップ、地域社会への貢献なども、企業の総合的な価値を形成する重要な要素となります。
環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みも、現代の企業価値評価において重要な位置を占めています。温室効果ガスの排出削減、再生可能エネルギーへの投資、人権尊重、取締役会の多様性などは、もはや社会貢献活動の領域だけに留まらず、企業の長期的な成長と持続可能性を示す重要な指標となっています。今や経営者、投資家、ステークホルダーは、短期的な利益だけでなく、長期的な視点から企業の存在意義と社会的インパクトを総合的に評価することが求められています。
また、企業価値は「将来キャッシュフローの現在価値」として算定されることから、企業価値とはそもそもサステナビリティを内包した概念であると言うこともできます。つまり、企業は短期的な利益に加え、その利益を長期的に維持・改善する取組みを積み重ねなければ、企業価値を高めることはできないということです。そのためには、ESGをはじめとしたサステナビリティへの取組みが必須となります。
つまり、企業の真の価値は、財務的指標と非財務的要素のバランスの中に存在し、長期的な成長と持続可能性を示す総合的な指標なのです。
企業のサステナビリティに影響を与える非財務要素として、近年新たに注目を集めているのが、責任ある調達(Responsible Sourcing)であり、企業の持続可能性を推進するための重要な要素として注目されています。その一環として、アニマルウェルフェアやケージフリー政策への取り組みが位置付けられ、企業はサプライチェーン全体で倫理的、社会的、環境的な配慮を行うことが求められています。
ケージフリー政策は、食料サプライチェーンにおける責任ある調達を象徴する事例として、家畜の生活環境を改善する取り組みが重要視され、世界的に変化の速度が早い課題です。例えば、ユニリーバやネスレといった欧米の企業は、いち早くケージフリー鶏卵の調達方針を採用し、アニマルウェルフェアに配慮した基準の普及を牽引してきました。
ケージフリー鶏卵の調達を成功させるためには、トレーサビリティ(追跡可能性)の確保が不可欠です。鶏卵の生産現場から最終的な消費者に至るまでのプロセスを明確にすることで、不正行為や非倫理的な慣行を防止し、調達基準の遵守を保証できます。この対応には、サプライヤーエンゲージメントや消費者へのアプローチとして、Certified Humaneなどの国際認証制度などを活用することが効果的です。これにより、アニマルウェルフェア基準の適合性を確保し、サプライチェーン全体の透明性を高めることができます。
企業価値とアニマルウェルフェア、ケージフリー鶏卵調達への変化
ケージフリー鶏卵調達の方針はアニマルウェルフェアの向上だけでなく、企業にとってブランド向上やリスクマネジメントといった影響を与えます。
一つは、倫理的消費を重視する消費者の支持を得られることです。消費者の中には、購入する商品が持続可能性や倫理的基準を満たしていることを求める層が増えており、ケージフリー政策は規制対応のみならず、ブランドイメージ向上に寄与します。
2024年8月に発表された欧州の消費者アンケート調査 (5カ国、3,192名)にて、消費者が肉や乳製品購入時にアニマルウェルフェアを重視するスコアは3.94/5.0で、新鮮さ(4.25)や品質/味(4.10)に次ぐ3位でした。一方で、カーボンフットプリント(3.38)や有機生産(3.18)は低く評価されました。この結果から、消費者が、新鮮さ、品質、アニマルウェルフェアといった直接的で分かりやすい属性を重視していることは、企業のブランド戦略にも重要な示唆を与えます。サステナビリティを訴求する際には、環境に良い製品であることを単独で強調するのではなく、消費者が関心を寄せるアニマルウェルフェアや食品の安全性などと結びつけて伝えることで、倫理的消費を求める層の支持を得ながら、アニマルウェルフェアを重視するブランドとしてのイメージ向上に貢献すると考えられます。
二つ目は、アニマルウェルフェアに配慮した取り組みは、リスクマネジメントを始めとするコンプライアンスリスクの低減、オペレーションリスクの低減、社会的リスクの低減にもつながります。最近の報道では、アメリカではイーロン・マスク氏の医療系ベンチャーが従業員からの内部告発により実験動物の取り扱いを巡り連邦捜査を受け、日本でも2024年に製薬業界での実験動物に関する情報開示を求める株主提案が出されるなど、透明性への関心が高まっています。また、大手鶏卵メーカーは過剰生産と低価格販売で市場を拡大しましたが、2022年に会社更生法を申請しました。これらの事例は、アニマルウェルフェアへの配慮が企業の評判や経営に大きな影響を及ぼす可能性を示しています。
特にグローバルな視点では、欧米諸国を中心にアニマルウェルフェアが法規制されたり、市場要件として導入されつつあり、日本企業もこれらの動向を無視できない状況になっています。国際基準の厳格化によって、アニマルウェルフェアに配慮しない企業が事業を継続できないリスクが高まる中で、自社の経営の持続可能性を高める取組みとして、ケージフリー政策に対応したサプライチェーン確立に取り組む企業が増えてきています。一方で、ケージフリー政策の導入には課題も存在します。例えば、日本ではケージフリー鶏卵の市場がまだ発展途上であり、価格面や供給量の面で制約があります。さらに、企業内での理解促進や教育、飼育技術の向上が必要です。
企業がアニマルウェルフェアやケージフリー政策を採用することは、CSR活動だけに留まらず、企業の長期的な発展と持続可能な社会の実現に向けた重要な戦略になっているのです。そして、課題は存在する中でも実際に日本企業も続々と取り組み始めています。ケージフリー鶏卵に変えていくことのデメリットや課題もあるにも関わらず、ESG投資、社会貢献、持続的な畜産、エシカル消費のニーズへの対応にコミットメントの意識を持って展開をして始めているのです。
スタートラインに並んだ日本企業
この10年近く、企業とのエンゲージメントを通して気づいたことは、2024年時点で多くの日本企業がスタートラインに並んだということです。つまり、マテリアリティ(重要課題)やサプライヤーのガイドラインにアニマルウェルフェアを政策とする企業が急速に増えたということです。10年前はこのような政策を掲げる企業はほとんど存在していませんでした。
私たちの活動を通して、顕著になっていることがあります。企業は人権、脱炭素、地球温暖化対策、食品ロスの削減など、またSDGsの17項目など、直面する難題の解決と対応を迫られていますが、このような社会課題の俎上でアニマルウェルフェア、ケージフリー調達が議論され始めていることです。今回は限定的な日本企業の公開情報を元にした検証ではありますが、多様な業種の取り組みをこちらの表にまとめてみました。食品を扱う企業の多くが、アニマルウェルフェアを意識し始めており、遅れがある業種は、製菓業界であることが理解することができます。またキユーピー、トリドール、東都生協以外の企業は数値や期限を明確に設けたゴール設定はしておらず、尽力する、検証する程度に留まっています。
企業の多くはアニマルウェルフェア政策やケージフリーの調達方針を「サステナビリティ」の課題として捉える中、一部「社会課題」と捉えている企業もあります。
2025年からの展望
2025年は多くの外資系企業が日本拠点も含めてケージフリー鶏卵100%の調達を目指しています。そんな中、日本で生産される鶏卵の10%を扱うキユーピーの鶏卵調達方針(2024年10月に更新)は、日本の鶏卵サプライチェーンへ大きな影響があります。キユーピーから鶏卵商品を購入しているレストランチェーン、食品加工業者が数多くあり、今後はケージフリー鶏卵の生産者の数、さらに需要が一気に高まると予想しています。
また、関係者の方からサステナビリティの取り組みが、企業間の競争になってきていることを耳にします。この背景には、「社会や環境の課題の対策と目標を掲げ、確実にそこに向かって行かないと、企業の価値が下がる」ことを意味するからでしょう。特に欧米進出する日系上場企業では、アニマルウェルフェアが国際基準やサステナビリティの企業報告義務に組み込まれ、求められ始めてきています。現在スタートラインに並んだ企業は、2025年以降にはどれくらいの鶏卵をケージフリーにするのか、またはクレートフリーの豚肉にするという具体的な目標値と期限を定めて公開する時期にきているのではないでしょうか。
企業のアニマルウェルウェア、ケージフリー鶏卵方針など取り組み表
企業名 | 業種 | 包括的AW政策 | AWの言及 | ケージフリー言及 | 詳細 |
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コープ自然派 | 小売業 | アニマルウェルフェアの取り組み | アニマルウェルフェアの取り組み | なし | 「5つの自由」を明記。酪農を放牧、養豚をフリーストールにし、採卵鶏に はケージフリーを取り入れ、アニマルウェルフェアに配慮してできた商品が 多い。卵に関する食育のページも設け、強制換羽をしないことも明記して いる。2024年7月17日発行の情報メディア 「Table」で平飼い卵について の記事は書いているが、政策と性質が異なるものである。 |
東都生協 | 小売業 | なし | 有機農畜産物・有機加工品の取り組み | 2023年度環境・サステナビリティ報告書 | ・2023年度環境・サステナビリティ報告書の中で2030年までの目標として 「ケージ飼い卵と平飼い卵の利用人数を逆転させます。」と掲げている。 2023年度環境・サステナビリティ報告書では2023年度の結果として、下 記の報告をしている。 ・「ひたち野 穂の香卵」を、ケージ飼いから平飼いに移行 ・ケージ飼い卵の利用人数(2,012,334 人)に対して、平飼いたまご の利用人数は、(348,181 人)でした。 ・ケージ飼いや、一般的な平飼い(エイビアリー)と、産直産地のこだわり の平飼いの違いを理解してもらうことを目的に「産地」と「組合員」の交流 を行いました。 |
イオン株式会社 | 小売業 | なし | なし | TopValuプライベートブランドの平飼いたまごに関する特設サイト | 平飼いたまごのプライベートブランドの特設ページを設けている。「平飼いたまご」の取り組みが第24回「グリーン購入大賞」の「大賞」(農林水産特別部門)を受賞。今後はアニマルウェルフェア、ケージフリー鶏卵の具体 的な政策が期待される。 |
セブン&アイHD | 小売業 | セブン&アイグループ持続可能な調達原則・方針 | セブン&アイグループ持続可能な調達原則・方針 | 「7つの重点課題」活動レポート | 「5つの自由」を明記。また7つの重点課題の中の「安全・安心で健康に配慮した商品・サービス を提供」、「地球環境に配慮し、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を 実現」の対応としてイトーヨーカドーで「昔ながらの平飼いたまご」販売していることを公表。今後はアニマルウェルフェア、ケージフリー鶏卵の具体 的な政策が期待される。 |
すかいらーくグループ | 外食業 | 責任ある調達 | 責任ある調達 | なし | 「5つの自由」を明記。すかいらーくグループ調達方針に「生物多様性、アニマルウェルフェア、省エネ、再生エネ、節水、食品ロス削減、廃棄物削 減、気候変動、CO2/GHG排出削減等の諸問題に対する当社の方針への理解と協力に努める」と記載。今後はケージフリー鶏卵の調達方針な ど、具体的な政策や取り組みの公表が求められる。 |
吉野家ホールディングス | 外食業 | サステナビリティ基本方針とマテリアリティ(重要課題) | サステナビリティ基本方針とマテリアリティ(重要課題) | なし | 「5つの自由」を明記。AWを短・中期的な施策としてみなす。今後はアニマ ルウェルフェア、ケージフリー鶏卵の具体的な政策が期待される。 |
トリドールHD | 外食業 | アニマルウェルフェア方針 | アニマルウェルフェア方針 | アニマルウェルフェア方針 | 「5つの自由」を明記。鶏卵の取り組み、妊娠ストールの廃止を段階的に進めている。また政策の進捗も「2022年度にまずは丸亀製麺10店舗で、 2023年度は全店舗の3%において、使われるすべての生卵を100%ケージフリーにしました。2024年度末には、ケージフリー卵を使う店舗数を全店舗の4%まで増やし、その後も順次拡大することを目指します。」と開示し透明性を担保している。 |
ワタミグループ | 外食業 | なし | なし | なし | 「5つの自由」を明記。オーガニックの農場を展開している平飼い卵生産がある。2020年にはワタミオーガニック新聞第5回(2020年12月1日付)で平飼い卵についての取り組みが言及。今後はアニマルウェルフェア、ケージフリー鶏卵の具体的な政策が求められる。 |
日本マクドナルドホールディングス | 外食業 | アニマルヘルス&ウェルフェア | アニマルヘルス&ウェルフェア | なし | 「原料原産地の食肉処理場に対してAnimal Health & Welfare(AHW)、HACCP/GMP、BSE Firewall、サプライヤー職場環境管理プログラム (SWA)等の要求事項を遵守するよう求めている。牛/鶏/豚の性質や食肉処理工程に応じて家畜が人道的な扱いのうえで屠畜(食肉処理)されているかを確認しています。」と記載。今後はケージフリー鶏卵の方針を含め、目標数値や期限を明確にした方針を開示することが求められる。 |
コンパスグループ | 外食業 | コンパスグループ・ジャパンのサステナビリティ | コンパスグループ・ジャパンのサステナビリティ | コンパスグループ・ジャパンのサステナビリティ | 本社が公開した2024年アニマルウェルフェアプログレスレポートによると 2025年末までにケージフリー鶏卵に移行するという目標を達成するため、供給が困難な地域では、「卵のクレジットを代替手段として利用する予定」と示しているが、物理的な供給を最優先としている。今後は方針の進捗情報を数値を用いて公開することが求められる。 包括的なAW政策(英文) ケージフリー政策(英文) |
ゼンショーHD | 外食業 | なし | なし | なし | パイロットファームである直営農場の「善祥園」の放牧地で、子牛はを飼養し、「家畜の健康管理」、「畜舎の衛生管理」、「飼料の選定」、「家畜を 大事に扱う(家畜福祉)ルール」など、ゼンショーグループが飼育に関する 規定を作成。今後はケージフリー鶏卵など他の畜種も含めて包括的なアニマルウェルフェア政策や取り組みの開示が期待される。 |
三井物産株式会社 | 総合商社 | サステナビリティレポート2024 | サステナビリティレポート2024 | なし | 「サプライチェーンマネジメント」、2021年以降の「サステナビリティレポー ト」では「家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾 病を減らすことが生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながると考え、WOAHを尊重し、現地法に則って、アニマルウェルフェアに配慮した事業に取り組む」としている。その上で、ブロイラーの取り組みとして、農水省で公表されている「アニマルウェルフェアの考え方に対応したブロイラーの飼養管理指針」に則った飼育をしていることを明示。 今後は「5つの自由」の明記、全畜種に対する調達方針、目標数値や期限を明確にした方針を開示することが求められる。 |
明治HD | 食品製造業 | 明治グループファームアニマルウェルフェアポリシー | 明治グループファームアニマルウェルフェアポリシー | なし | 「5つの自由」を明記。乳牛が中心となる事業のため乳牛に関する除角、 断尾への対策についての姿勢は明確にしている。2024年の改定では採 卵鶏に関する取り組みを追記。今後は各畜種の具体的な取り組みの進捗 が期待される。 |
日清食品グループ | 食品製造業 | 持続可能な調達 | 持続可能な調達 | 持続可能な調達 | 「5つの自由」を明記。ブラジル日清や米国日清ではケージフリー鶏卵が既に導入されており、日清食品でも2023年より一部導入開始している。 |
プリマハム | 食品製造業 | プリマハムアニマルウェルフェアポリシー | プリマハムアニマルウェルフェアポリシー | なし | 「5つの自由」を明記、及びフリーストールの導入(その他母豚のサイズに合わせた分娩クレート、かじる行動ができるおもちゃによるエンリッチメント、カメラ導入)アニマルウェルフェアポリシー適用範囲:プリマハムグループ農場および 食肉処理場。他の畜産動物及びサプライチェーン全体。 今後はケージフリー鶏卵を含め各畜種の調達に関する具体的な目標の 開示が期待される。 |
伊藤ハム米久HD | 食品製造業 | アニマルウェルフェア | アニマルウェルフェア | なし | 「5つの自由」を明記。アニマルウェルフェアガイドラインを開示。統合報告書2024によると、グループで策定したアニマルウェルフェアポリシーに則り、「妊豚舎を新築・改築する際、妊娠ストール方式を廃止し、群飼方式 もしくはフリーストール方式の飼育方法とする」方針を策定。家畜の快適性に配慮した飼養管理を通じてアニマルウェルフェアの向上に努める。 |
日本ハム | 食品製造業 | アニマルウェルフェアの取り組み | アニマルウェルフェアの取り組み | なし | 「5つの自由」を明記。「ニッポンハムグループ アニマルウェルフェアガイドライン」を設定。取り組み目標としては、同グループが資本を過半数保有する企業が対象とし、2030年までに国内全農場の妊娠ストールの廃止。 国内全処理場内の係留所への飲水設備の設置(牛・豚)(完了)(2023年 度まで)、国内全農場・処理場への環境品質カメラの設置(2024年度まで)としている。 「牛・鶏のストレス軽減の取り組み」として、オーストラリアでは牛のストレ ス軽減の向上、養鶏についてはトルコの育成農場での取り組みの記載がある。 今後は国内における豚以外の畜種に関しても具体的なアニマルウェルフェア、ケージフリーの取り組みが期待される。 |
全農グループ | 食品製造業 | 全農グループアニマルウェルフェアポリシー | 全農グループアニマルウェルフェアポリシー | なし | 「5つの自由」を明記。母豚フリーストール導入。全農たまごリポート2024でケージフリーの利点や他社との平飼い卵の協働を紹介している。今後はケージフリー鶏卵を含む全畜種に関する具体的な政策が期待される。 |
スターゼン | 食品製造業 | 社会-重要課題の取り組み | 統合報告書2024 | なし | 茨城大学の指導をもとにアニマルウェルフェア対応を実施している。「5つの自由」の実現、快適で健康的な飼養環境の整備の2つの軸。豚の妊娠 ストールフリー化を段階的に進めている。飲水設備や監視カメラ設置など (統合報告書2024)。グループ農場の豚の歯切作業を廃止(2022年1月), 阿久根工場は、ヨーロッパの厳しい基準をクリアし、牛肉の輸出認定を取 得(2014年5月)。 |
キユーピー | 食品製造業 | 持続可能な調達の推進 | 持続可能な調達の推進 | ケージフリー飼養への取り組みについて | 「5つの自由」を明記。2024年10月24日に更新した方針では、「キユーピーグループは米国や欧州において2025年までにキユーピーブランド商品に使用する鶏卵の100%をケージフリー鶏卵に、米国においては 2022年に3年前倒しでこの目標を達成した。グローバルで製造販売しているキユーピーマヨネーズのケージフリー鶏卵の使用率を、現在の3%から 2027年までに10%に引き上げる。日本における鶏卵加工業界のリーディングカンパニーとして、2030年までにキユーピーマヨネーズに使用する卵 の20%にあたる量の国内のケージフリー飼養卵を調達し、ケージフリー 飼養卵の普及に努め、国内生産者のケージフリー飼養の拡大を支援していくとともに、市場創りと拡大にも取り組んでいく。今後10 年間で国内のケージフリー飼育の割合を現在の1%から5%に引き上げることを目指す」と公約。 |
味の素 | 食品製造業 | アニマルウェルフェアに関するグループポリシー | アニマルウェルフェアに関するグループポリシー | 鶏卵の調達に関する考え方 | 「5つの自由」を明記。平飼いマヨネーズ展開/「鶏卵の調達に関する考え方」を開示している。フランスでは使用する鶏卵を2025年までに全てケージフリー鶏卵にすることを目標に掲げている。「味の素グループサステナビリティレポート2024年」では、「欧州では使用する全ての卵をケージフリー卵に切り替えることを目指す」と明記。今後はアジア地域、特に日本の鶏卵の調達についての具体的な数値を設定し目標を公開することが期待される。 |
マルハニチロ | 食品製造業 | アニマルウェルフェアに関するマルハニチログループ方針 | アニマルウェルフェアに関するマルハニチログループ方針 | なし | 「5つの自由」を明記。養殖魚については飼育密度を10%低下させるという取り組みをしている。今後全畜種に関するアニマルウェルフェアの取り組みの開示と、すでに設定している目標については数値を明記した報告が期待される。 |
日清製粉 | 食品製造業 | なし | サプライヤーの皆様へのお願い(サプライヤー・ガイドライン) | なし | 「サプライヤーの皆様へのお願い(サプライヤー・ガイドライン)」では動物福祉についての行動規範「動物福祉を考慮し、動物に対する健全な取り扱い方法を採用するために努力する」としている。今後は具体的なアニマルウェルフェア政策の開示が期待される。 |
ニチレイグループ | 食品製造業 | なし | ニチレイグループサプライヤーガイドライン | なし | 「5つの自由」を明記。「ニチレイサプライヤーガイドライン」に動物福祉について言及。適用範囲は「近年は家畜動物のみならず、十脚甲殻類(エビなど)や頭足動物(イカなど)もその対象とすべきと考えられています。」と記載。ニチレイフレッシュでは、ブロイラーにはアニマルウェルフェアを考慮したJAS規格の持続可能な鶏肉の認証をとった「純和鶏」を使用していることを明記。今後は具体的で明確な会社の姿勢を示すアニマルウェルフェア政策の開示が期待される。 |
株式会社ニッスイ | 食品製造業 | 環境(水産資源の持続可能性) | ニッスイグループ統合報告書2024 | なし | 「5つの自由」を明記。対象範囲は「ニッスイグループの養殖事業」。最適な養殖環境、薬剤の使用、養殖環境と健康状態のモニタリング、ストレスの少ない締めと事前の気絶、AI・IoT技術を活用したウェルフェアの取り組みを掲げている。今後は他の畜種の取り組みや政策の開示が期待される。 |
エスフーズ株式会社 | 食品製造業 | サステナビリティ | サステナビリティ | なし | 「サステナビリティの基本方針」の「5つのマテリアリティ(重要課題)」の項目の「おいしさと健康を愛する食品の安定調達・供給」の中でアニマルウェルフェアへの対応を明記。今後は畜種別の具体的な方針の設定と開示が期待される。 |
丸大食品 | 食品製造業 | アニマルウェルフェアポリシー | アニマルウェルフェアポリシー | なし | 「5つの自由」を明記。対象となる範囲は自社養豚農場であり、そこでは農林水産省が推奨する「アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針」に基づいて飼育している。豚の妊娠ストールを廃止すべく検討をしていると明記。今後は他の畜種の取り組みや政策が期待される。 |
不二家 | 食品製造業 | なし | なし | なし | アニマルウェルフェアの政策や言及はない。主要となる牛乳や卵のアニマルウェルフェアの言及や調達方針を明示することが求められる。 |
森永製菓 | 食品製造業 | なし | なし | なし | アニマルウェルフェアの政策や言及はない。主要となる牛乳や卵のアニマルウェルフェアの言及や調達方針を明示することが求められる。 |
江崎グリコ | 食品製造業 | なし | マテリアリティの特定プロセス | なし | 有識者からの意見の中に「これからの時代は、人権や動物福祉(アニマルウェルフェア)に配慮されていることも「安心」に大きく関係すると考えます。Glicoグループがこれからの時代に提供する「安全・安心」を深掘りした上で活動を推進し、その情報を積極的に開示することを推奨します」とう意見があった。今後はグループ全体の包括的なアニマルウェルフェア政策や取り組み、主要となる牛乳や卵のアニマルウェルフェアの調達方針を明確にすることが期待される。 |
森永乳業 | 食品製造業 | 方針・宣言(デイリーアニマルウェルフェアポリシー) | 方針・宣言(デイリーアニマルウェルフェアポリシー) | なし | 「5つの自由」を明記。WOAHに遵守することを明記。また、乳牛の飼養管理、除角、断尾、分娩と新生子、牛輸送、森永乳業グループの酪農家や行政との支援活動について記載している。具体的な数値目標と期限を明記した方針を開示することが求められる。 |
雪印メグミルク | 食品製造業 | サステナビリティ(酪農生産への貢献) | サステナビリティ(酪農生産への貢献) | なし | 「アニマルウェルフェア(動物福祉)に対する考え方」を開示し生産者への取組みに対する支援も行っている。 |
記事監修:Lively合同会社
2022年12月設立。サステナビリティ・コンサルティング、大学との共同研究、ソーシャル・エンゲージメントを軸に事業展開。東京農工大学農学部新村毅教授がリードするアニマルウェルフェアに配慮した次世代鶏舎「Unshelled」と協働し、2025年春に企業向け体験型教育プログラムを提供予定。