025年2月14日、AWCPは東京学芸大学附属国際中等教育学校の中学3年生に向けて、アニマルウェルフェアについての特別授業の機会をいただきました。きっかけは、技術・家庭科(技術分野)の馬田大輔先生からいただいた授業「生物育成の技術」でのアニマルウェルフェアをテーマにしたコラボレーションのご提案です。

馬田先生は個人的にもアニマルウェルフェア、特に鶏卵のケージフリー生産にご興味をお持ちで、ご自身の授業では、畜産における倫理問題、特にアニマルウェルフェアについて深く掘り下げられています。

今回の授業では、学生たちが生産者、消費者、行政というそれぞれの視点にたち、アニマルウェルフェア推進のための要因を分析し、仮説を立て、リサーチに基づいた提言を行うという、非常に高度な内容に挑戦しました。

私たちAWCPは、アニマルウェルフェア、そしてケージフリーの専門家として、学生たちの提言に対するフィードバックや、質問への回答を行い、学生たちとの交流を通じて、私たち自身も多くの学びを得ることを目指しました。授業は、中学3年生の4クラス6班が事前にまとめた意見に対して、AWCPがコメントを行い、さらに各班からの質問に答えるという構成でした。

「生物育成の技術」という授業の中で、食糧生産技術として畜産分野を扱うことは、学生たちが将来社会に出ていく上で、非常に重要な学びとなります。特に、鶏卵生産におけるケージ飼育の問題は、価格競争、消費者の意識、生産者側の課題など、様々な要因が複雑に絡み合っており、容易に解決策を見出すことが難しい問題です。

馬田先生は、学生の皆がこの問題について多角的な視点から分析し、倫理的な観点から考察を深め、市民としてどのように行動すべきかを主体的に考える機会を提供されています。学生たちの熱心な姿勢と鋭い質問は、私たちにとっても大きな刺激となりました。

授業では行政、消費者、生産者の立場で、多角的に本課題をとらえ熟考いただきました。各自が大人に負けない分析的思考で、多様な立場で理論的に考えられていらっしゃり、とても感銘を受けました。下記割と多かったご意見です。

1. 生産コストと補助金の問題:

  • ケージフリーへの移行には多額の費用が必要。
  • 国からの補助金が不十分なため、現状での移行は困難。

2. 動物倫理(アニマルウェルフェア)と議論の重要性:

  • 動物にも感情があるという視点からの尊重が必要。
  • 動物倫理に関する教育の必要性が高い。
  • 「卵はダメで、肉はいいのか」のような議論を通じて、消費する責任を考える必要がある。

3. 消費者の役割と意識改革:

  • 行政や生産者だけでなく、消費者の需要が重要。
  • 消費者がケージフリー卵を購入する状況づくりが必要。
  • 国民や消費者の意識改革には教育が効果的。

4. 企業の視点と課題:

  • ケージフリーは企業にとってメリットが少ないと認識されている。
  • 生産効率や価格が重視され、普及が進みにくい。
  • 日本国内では、ケージフリー卵への明確な支持を表明する企業が海外に比べて少ない。
  • アニマルウェルフェアの認知度向上と、消費者(個人・企業)の意識改革が不可欠である。

5. 法律と生産効率の問題:

  • 法律改正の困難さと生産効率の低下が普及の障壁。
  • 海外の動向から、日本でもケージフリーの割合が増加する可能性もある。

6. 消費者側の課題:

  • ケージフリーの認知度不足と価格の高さが消費者の購買意欲を抑制。
  • 消費者がバタリーケージ卵を購入し続ける限り、状況は改善されない。

解決策としては下記のような点が挙げられました。

  • 消費者へのアプローチ:
    • 動物倫理に関する教育の強化:学校教育や社会教育を通じて、動物の権利と福祉に関する意識を高める。
    • 消費者の購買行動の変革:正しい情報提供と啓発活動を通じて、消費者の購買行動をケージフリー卵へと誘導する。
    • ボイコットやデモなどの実践的な教育:消費者行動の選択肢を増やすため、若年層に対して社会運動への参加を促す教育を行う。
    • 消費者の経済的サポート: 行政と協力し、経済的に苦しい消費者にもケージフリーの卵を購入できるように補助金などを検討する。
  • 生産者へのアプローチ:
    • 補助金制度の拡充:ケージフリーへの移行を促進するため、国や自治体からの経済的支援を強化する。
    • 技術支援と情報提供:ケージフリーの生産技術に関する情報提供や研修を行い、生産者の不安を軽減する。
  • 行政へのアプローチ:
    • 政策の推進:ケージフリーの普及を促進するための法規制やガイドラインを策定する。
    • 若年層への経済対策の強化: ケージフリーの卵を買いたくても経済的に難しい若年層への経済対策を行う。
  • 社会全体へのアプローチ:
    • 情報発信の強化:メディアやSNSを活用して、ケージフリーに関する情報を広く発信する。
    • 議論の促進:動物倫理に関する議論を積極的に行い、社会全体の意識を高める。
    • 代替卵の推奨: 卵の価格高騰や、供給不足に備えて、代替卵の推奨を促す。

最後に重要な点として指摘されていることをまとめると、ケージフリー実現には、消費者の意識改革が生産者や行政の行動を変える力となる、ただし、経済的弱者への配慮も重要で、社会全体で問題解決に取り組む必要がある。現状、課題が多いため、時間をかけ議論しながら、段階的な意識改革が必要、ということでした。

授業の一環として、馬田先生は学生にアンケートを実施くださいました。

ケージフリーが半分くらいになる、20%くらいになるという意見が80%ありました。また今回の授業を受けて、 ケージフリー賛成について86%が賛成と回答してくれました。

未来を担う中学生の皆さんから応援を受けた気がします。世の中が卵はケージフリーを買いたいという、それが当たり前となるように、努力を続けていきたいと改めて感じた授業でした。

今回の授業を通して、私たちAWCPも、未来を担う若い世代と共に、アニマルウェルフェアについて考える貴重な機会をいただきました。これからも、AWCPは教育現場との連携を大切にし、アニマルウェルフェアの普及に努めてまいります。に努めてまいります

馬田先生、学生の皆様どうもありがとうございます!