2024年10月23日・24日、中国とドイツの経営コンサルティング会社、IQC(Integrated Quality Consulting: 統合品質コンサルティング)による「2024 The 6th Quality and Welfare Egg Conference」にご招待を受け、麻布大学 獣医学部(動物資源経済学)大木茂教授と、AWCPのシニアコーポレートコンサルタント福田証子が日本のケージフリー鶏卵について発表する機会をいただきました。
IQCは中国とドイツの経営コンサルティング会社で、食品サプライチェーンのすべてのステークホルダーに食品安全、品質管理、デジタルシステム、持続可能性に関する専門的なサービスを提供している組織です。構成メンバーは国内外の豊富な業界経験と専門知識を備えた大学教授、研究者やNGOsなどで構成されており、これまで数多くの大手ブランドにサプライチェーンに関する技術サポートを提供してきました。
初日10月23日はケージフリー認証座談会が行われ、生産者、コンパッション・イン・ワールドファーミング(CIWF)などの動物擁護団体、大学教授など30人ほどが集まり、日本からは麻布大学動物資源経済学研究室の大木茂教授を含める5名がプレゼンテーション発表を行いました。
23日の大木教授の発表では、各国のケージフリー鶏卵の構成比、需給動向、鳥インフルエンザの状況、農林水産省によるアニマルウェルフェアの政策方向、ケージフリー移行によるコスト、日本におけるケージフリー鶏卵の浸透の課題などをデータを元にプレゼンテーションが行われました。現地のケージフリー卵生産者からは日本におけるケージフリー鶏卵の生産効率などの技術的な質問などがありました。
2日目は中国のみならず世界から200名ほどが集まり、大学教授、動物擁護団体、ケージフリー鶏卵生産者、コンサルティング会社などから15名のプレゼンテーションと、IQCの認証を取得しているケージフリー生産者による討論が行われました。日本と比較し技術開発や研究が進んでおり、特に急速に進められているトレーサビリティの開発に関する話が際立ちました。
AWCPのプレゼンテーションでは、日本のケージフリー鶏卵活動の動向、例えば昨年公開された農水省の新たなアニマルウェルフェアの指針、スーパーでのケージフリー鶏卵が増えていること、今やコンビニエンスストアでもケージフリー鶏卵が購入できるようになった状況、またサステナビリティの取り組みに先進的なイタリアの食品メーカーであるバリラ社(Barilla)の事例を挙げて、ケージフリー鶏卵調達を達成するための戦略的なロードマップなど、企業や生産者に参考になる情報を共有いたしました。 視聴者からは、日本におけるケージフリー鶏卵の認証制度やトレーサビリティについての質問などがあり、消費者からの信頼性への関心の高さが伺われました。
3日目はケージフリー卵の生産者の放牧の農場と液卵施設を視察する機会がありました。多岐に渡り農業事業を展開する「Jiangu Renkang Egg Industry Co., ltd.」という大型生産者を訪れました。同社が所有する広大な土地を観光用のEV車で放し飼いの採卵鶏農場まで案内していただきました。日本ではなかなか見ることが出来ない規模の土地で鶏が自由に動き回る様子を近くで見ることができました。人が近づいても警戒せずそれぞれのペースで走ったり歩いたり休んでいる様子を見ながら参加者の皆さんは心が和んでいる様子でした。
今回のIQCによるカンファレンスで発表された中国独自の課題解決のための最先端の研究内容は興味深く刺激的なものでした。中国には2025年をケージフリー鶏卵調達の期限とする目標を掲げるグローバル企業が数多く存在します。そのため、業界の多くの企業、生産者などのステークホルダーの間ではこれをビジネスの機会とも捉え積極的に取り組まれていることが分かりました。今回は日本の状況との違いをお互いに学ぶことができた貴重な機会になりました。