2025年6月24日、私たちはCompassion in World Farmingと共同で、大手企業の家畜アニマルウェルフェアへの取り組みを評価する指標「Business Benchmark on FarmAnimal Welfare(BBFAW)」をテーマにしたウェビナーを開催しました。BBFAWでは、日本の食品企業5社が毎年評価対象となっていますが、現在いずれの企業もTier 6(最下位ランク)にとどまっています。このウェビナーは、日本の企業や投資家の間でまだ十分に認知されていないBBFAWについて理解を深めるとともに、企業によるアニマルウェルフェアやケージフリーへの取り組みを促進することを目的として実施されました。

Ms. Arisa Kishigami

基調講演:BBFAWとESG要素の関連性

基調講演には、En-Cycles独立コンサルタントであり、BBFAWを運営するクロノス・サステナビリティ社のアジア太平洋地域スペシャリストである岸上有沙氏をお迎えしました。岸上氏は、アニマルウェルフェアが単体のテーマとしてはまだ投資家の最優先事項ではないものの、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の各要素と密接に関連している点を強調しました。具体的には、気候変動、生物多様性、人々の健康、サプライチェーン管理など、ESG要素との関係性を通じてBBFAWの評価指標を捉えることで、企業の取り組みや投資家の働きかけをさらに充実させる可能性があるという内容でした。

Ms. Rubia Soares

BBFAWの概要解説

続いて、Compassion in World Farmingのアジア地域シニアフードビジネスマネージャーであるルビア・ソアレス氏より、BBFAWの詳細な解説が行われました。BBFAWは、日本企業5社を含む世界150社の食品企業を対象に、アニマルウェルフェアに関する透明性向上や具体的な改善を促進するための信頼できるフレームワークを提供しています。

評価は、以下の主要項目に基づいて行われます:
アニマルウェルフェアに関する政策
・ガバナンス体制
・期限付き目標
・実際の成果
・動物由来食品への依存度を減らす戦略

結果は、最高ランクの「Tier 1」(リーダーシップを発揮)から最低ランクの「Tier 6」(課題認識が限られている)までの6段階で示されます。また、2020年からは、アニマルウェルフェアの取り組みがどの程度実施されているかを示すインパクト評価も導入されました。しかし、多くの企業が依然として下位ランク(EまたはF)に位置しています。

特にアジア太平洋地域では、対象21社のうち90%がTier 5または6にとどまっており、取り組みが初期段階にあることが明らかになっています。ソアレス氏は、BBFAW評価向上の第一歩として、以下のような取り組みを提案しました:

・アニマルウェルフェアをビジネス上の重要課題として認識していることを、Webサイトやサステナビリティレポートに記載する。
・動物が痛みや苦しみを感じる「感受性のある生き物」であることを認識している旨を明示する。
・アニマルウェルフェアを管轄する責任部署や監督体制を明確に開示する。

また、具体的な実践例として、採卵鶏からケージフリーの取り組みを始めることが効果的であると述べました。これは、世界的にケージフリーへの移行が進んでおり、企業、NGO、消費者の関心が高まっているためです。

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ウェビナー参加者と運営チーム

今回のウェビナーには、大手食品関連企業、投資関連会社、大学、SDGs関連機関、動物擁護団体、コンサルティング会社、獣医師、生産者、個人など、多岐にわたる参加者が集まり、高い関心を寄せていただきました。本企画の運営には、Compassion in World FarmingのMarketing Communications Manager APAC LATAMであるValeria Bastieas氏が大きく貢献してくださいました。また、AWCPからは以下のメンバーが運営を担当しました:
・シニアコーポレートコンサルタント 福田証子(司会)
・広報 鈴木豊史(PR担当)
・シニアコーポレートコンサルタント 池嶋丈児 / 代表 上原(カバリヤ)まほ (運営サポート)

今後の展望

AWCPとしては、今後もCompassion in World Farmingやクロノス・サステナビリティ社と連携し、BBFAWのフレームワークを活用しながら、日本企業によるアニマルウェルフェアの向上やケージフリーの推進に取り組んでまいります。